遺産分割協議書
「遺産分割協議書」とは、亡くなった方(被相続人)の遺産を誰がどのように相続するかを相続人全員で話し合い、書面にまとめたものです。
■主なポイント
- 法的効力
遺産分割協議書は、相続登記や預金払い戻しなど、法的な手続きをする際に必要になります。 - 記載内容
- 被相続人の情報(氏名・死亡日)
- 相続人全員の氏名と住所
- 分割内容(どの財産を誰が相続するか)
- 相続人全員の署名・押印(実印)
- 印鑑証明書の添付
- 注意点
- 相続人全員の合意が必要(1人でも欠けると無効)
- 財産内容が不明確だと後にトラブルになることも
お子様がいないご夫婦の相続
お子様がいないご夫婦の相続では、「配偶者が必ずすべての財産を相続するわけではない」という点がとても重要です。
多くの方が誤解しやすいポイントですので、あらかじめ相続の基本的なルールを知っておきましょう。
◆ お子様がいない場合の相続の基本ルール(法定相続)
亡くなった方(被相続人)にお子様がいない場合、法定相続人となる親族の順位は、原則として次のとおりです。
- 配偶者は常に相続人となります
- お子様がいない場合は、父母などの直系尊属が相続人となります
- 直系尊属がすでに亡くなっている場合などは、兄弟姉妹が相続人となります
※兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合、その子(甥・姪)が相続人となることがあります。
◆ 例で見る相続パターン
■ ケース1:配偶者と両親が相続人の場合
法定相続分は、
・配偶者:3分の2
・両親:3分の1
となります。
両親がともに健在の場合、両親は3分の1を原則として均等に分けます。
■ ケース2:配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合
(両親などの直系尊属がすでに亡くなっている場合)
法定相続分は、
・配偶者:4分の3
・兄弟姉妹:4分の1
となります。
兄弟姉妹が複数いる場合は、この4分の1を原則として人数に応じて分けることになります。
◆ 注意したいポイント
・遺言書がない場合、法定相続人全員による遺産分割協議が必要になることがあります。
・配偶者が安心して自宅に住み続けられるようにするためにも、事前に遺言書を作成しておくことは有効な対策の一つです。
・兄弟姉妹や甥・姪が相続人となる場合、配偶者とほとんど面識がなくても相続権が発生することがあります。
・特に自宅や土地などの不動産が主な相続財産の場合、現金のように簡単に分けることができないため、遺産分割の話し合いが難しくなるケースがあります。
◆ 親から受け継いだ財産をめぐって意見が分かれることも
特に注意したいのが、被相続人が親から相続した実家や土地などを所有しているケースです。
親から受け継いだ財産であっても、被相続人が所有している財産であれば、原則として被相続人の相続財産となります。
お子様がおらず、両親などの直系尊属もすでに亡くなっている場合には、配偶者だけでなく、被相続人の兄弟姉妹などが相続人となることがあります。
このような場合、兄弟姉妹から、
「もともとは両親が所有していた実家や土地なので、配偶者だけが受け継ぐことには納得できない」
といった意見が出ることも考えられます。
一方、配偶者としては、
「長年夫婦で生活してきた家なので、これからも住み続けたい」
と考えることもあるでしょう。
このように、法律上の相続権だけでなく、財産の由来や家族それぞれの思いが絡むことで、遺産分割について意見がまとまりにくくなる場合があります。
◆ 相続対策として検討したい「公正証書遺言」
こうした相続トラブルを防ぐための方法の一つが、公正証書遺言の作成です。
「配偶者に財産を遺したい」
「自宅は配偶者に相続させたい」
など、ご自身の意思をあらかじめ明確に残しておくことで、相続発生後のトラブルを防ぎやすくなります。
また、兄弟姉妹には原則として遺留分がありません。
そのため、お子様がおらず、両親などの直系尊属もいないご夫婦の場合は、遺言書を作成しておくことが特に重要な相続対策の一つとなります。
「うちは子どもがいないから、夫(妻)が全部相続するだろう」と思っていても、実際には兄弟姉妹や甥・姪が相続人になるケースがあります。
大切な配偶者の生活や住まいを守るためにも、元気なうちから相続について考え、準備しておくことが大切です。
相 続
相続について考えるとき、「自分が相続した財産だから、自分の考えで決めればよい」と思われる方も少なくありません。
しかし実際には、相続した財産の使い方や、その財産を次の世代へどのように残していくかは、ご本人の考えだけで決まるとは限りません。
配偶者やお子様など、ご家族それぞれの考えや将来設計が大きく影響することがあります。
例えば、夫が親から受け継いだ財産であっても、妻には妻の立場から、「子どもの養育費や学費、塾や習い事、将来の進学などのために、できるだけ財産を残しておきたい」という考えがあるかもしれません。
夫自身は、親から受け継いだ財産を「自分が相続した財産」と考え、その財産を自分の考えで活用したいと思っているかもしれません。
一方で妻は、「子どもの教育や家族の将来のために大切に残しておきたい」と考え、その財産の使い方や残し方について意見を持つことがあります。
これは、単に配偶者が財産に「口を出している」ということではありません。
夫婦であっても、財産に対する考え方や優先順位、将来に対する考え方が異なるということです。
一方は「自分たちの今の生活や老後のために使いたい」と考え、もう一方は「子どもの教育や将来のためにできるだけ残したい」と考えるかもしれません。
さらに、お子様自身の考えや兄弟姉妹の関係、親族からの意見などが加わることで、財産をめぐる考え方はより複雑になることがあります。
このように、相続は「誰が財産を受け継ぐのか」ということだけで終わるものではありません。
受け継いだ後、その財産をどう使うのか、誰のために残すのか、そして次の世代へどのように引き継いでいくのか。その過程には、配偶者や子どもなど、周囲の家族の考えや事情が大きく関わってきます。
だからこそ相続対策では、「誰に、いくら残すか」だけではなく、財産を受け継いだ後、その財産がどのように使われ、さらに次の世代へどのように引き継がれていくのかまで考えておくことが大切です。
相続は、財産を受け継ぐ本人だけの問題ではありません。
財産を残す人、受け継ぐ人、その配偶者、そして子どもたち。それぞれの想いや事情が関係するからこそ、元気なうちから将来を見据え、ご家族で話し合っておくことが、円満な財産承継につながります。
被相続人の居住用財産の特例
(被相続人の居住用財産の特例)
相続した空き家を一定の条件で売却すると、譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。
※ただし、2024年(令和6年)1月1日以後の譲渡について、対象となる被相続人居住用家屋およびその敷地等を取得した相続人が3人以上の場合、特別控除額の上限は一人あたり2,000万円となります。
□制度の目的
- 相続後に放置される空き家の増加防止
- 老朽化による倒壊等のリスクの回避
- 空き家の早期流通・有効活用の促進
税制上の根拠:租税特別措置法第35条
関係機関:国税庁・国土交通省
□ 主な適用要件(売主側)
① 相続した住宅であること
- 原則として、相続開始直前まで被相続人が居住していた住宅であること
- 原則として、被相続人以外に居住していた人がいなかったこと
- 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること
- 区分所有建物登記がされている建物ではないこと
※一定の要件を満たす老人ホーム等への入所の場合も対象となることがあります。
② 相続後の状態
相続時から売却時まで、
- 事業に使用していない
- 賃貸していない
- 居住用として使用していない
などの要件を満たす必要があります。
③ 売却条件
- 売却代金が1億円以下
- 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却
- 特例を受けるためには確定申告が必要
□ 2024年(令和6年)以降の重要な改正
相続人が3人以上の場合
2024年(令和6年)1月1日以後に対象となる「相続した空き家」を売却した場合で、対象となる家屋・敷地等を相続または遺贈により取得した相続人が3人以上いる場合には、これまで最大3,000万円だった特別控除額が、一人あたり最大2,000万円となります。
つまり、
相続人が1人または2人 → 一人あたり最大3,000万円
相続人が3人以上 → 一人あたり最大2,000万円
となる点に注意が必要です。
□ 耐震・取壊し要件
― 2024年(令和6年)1月1日以後の譲渡 ―
現在は、主に次の方法があります。
① 売主が耐震改修して売却
→ 現行の耐震基準を満たした状態で売却
② 売主が解体して更地で売却
→ 建物を取り壊したうえで土地を売却
③ 売却後に買主が耐震改修または取壊し
→ 売却時点では旧耐震の状態でも一定の要件を満たせば対象
→ 譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに、耐震改修または建物の取壊しを行う必要があります。
この③が、2024年(令和6年)1月1日以後の譲渡から適用された重要な改正ポイントです。
□ 購入者側のポイント
売却後に購入者が耐震改修等を行う場合は、
- 売買契約時に、買主が耐震改修または取壊しを行うことについて確認しておく
- 譲渡日の属する年の翌年2月15日までに工事等を完了する
- 耐震改修の場合は、所定の耐震基準適合証明書等を準備する
- 売主が確定申告・確認書取得等に必要となる書類について、買主の協力を得る
ことが重要です。
耐震改修費用を買主負担とする場合には、費用負担や工事期限、必要書類への協力について、売買契約書・特約等で明確にしておくことが実務上重要です。
□ 実務上の注意
- 耐震改修・取壊しの期限(原則として譲渡年の翌年2月15日)に注意
- 「被相続人居住用家屋等確認書」など、確定申告に必要な書類を事前に確認する
- 売却代金1億円以下の判定には、一定の場合、他の相続人による売却分等も影響する
- 相続人が3人以上の場合は、一人あたりの控除上限が2,000万円
- 共有・共同相続の場合は、各相続人について適用要件を確認する必要がある
- 他の譲渡所得に関する特例との適用関係についても事前確認が必要
自筆証書遺言書保管制度
■自筆証書遺言書保管制度とは
法務局では、自筆証書遺言書を安全に保管する制度を提供しています。この制度を利用することで、遺言書の紛失や改ざんのリスクを減らし、相続時のトラブルを防ぐことができます。
■保管申請の手続き
- 遺言書の作成
遺言書は、全文、日付、氏名を自筆し、押印する必要があります。パソコンで作成したものや録音は対象外です。
- 保管申請書の作成
所定の保管申請書に必要事項を記入します。申請書の様式は法務省のウェブサイトからダウンロードできます。
- 必要書類の準備
- 本人確認書類(顔写真付きの身分証明書)
- 遺言書原本
- 保管申請書
- 法務局への申請
遺言者本人が、遺言書保管所(法務局)に出向いて申請します。代理人による申請はできません。
■申請時の注意点
- 遺言書は、消すことのできない筆記具で記入してください。
- 遺言書の内容に不備があると、保管を拒否される場合があります。
- 遺言書は、原本に加え、画像データとしても長期間適正に管理されます。(原本:遺言者死亡後50年間、画像データ:同150年間)
法定相続情報証明制度
「法定相続情報証明制度(ほうていそうぞくじょうほうしょうめいせいど)」について、ご説明します。
■法定相続情報証明制度とは?
「法定相続人が誰なのか」を法務局が公的に証明してくれる制度です。
相続の手続き(銀行・証券・不動産登記など)では、通常、戸籍を何通も提出する必要がありますよね?
それを簡略化するために、「法定相続情報一覧図」という1枚の証明書を使えるようにしたのがこの制度です。
■どんなときに使える?
相続が発生したあとの、以下のような手続きで利用されます:
- 銀行口座の解約
- 不動産の相続登記
- 株式・証券の名義変更
- 相続税申告 など
■どんな書類がもらえるの?
法務局が発行する「法定相続情報一覧図の写し(登記官の認証付き)」です。
これを各機関に提出すれば、戸籍一式を毎回出さなくて済むようになります。
■手続きの流れ
- 戸籍一式を取得(被相続人の出生から死亡まで、相続人の現在の戸籍など)
- 「法定相続情報一覧図」を作成
- 登記所(法務局)に申出
- 法務局が確認・認証し、写しを交付
※手続きは無料!
※司法書士などの専門家に依頼することも可能です。
■メリットまとめ
戸籍提出が1回で済む 毎回戸籍をコピーする手間がなくなる
無料で取得できる 認証手数料も不要
何枚でも写しを交付してもらえる 複数の金融機関に同時提出できる
手続きがスムーズに進む 書類チェックの時間が短縮
■注意点
- 法定相続情報一覧図の内容にミスがあると、再提出が必要
- 法定相続人が確定していないと使えない(相続放棄がまだの場合など)
■どこで手続きできる?
法務局(登記所)で、郵送や窓口で申出可能です。
全国どこの法務局でもOK(一部制限あり)
相続税の基礎控除、配偶者特別控除
相続税の「基礎控除」と「配偶者の税額軽減(配偶者控除)」について、ご説明します。
■相続税の基礎控除とは?
相続税には「基礎控除」という制度があり、相続財産がこの金額以下であれば、
相続税はかかりません。
■基礎控除の計算式
3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)
<例>
法定相続人が配偶者と子ども2人の合計3人の場合
3,000万円 +(600万円 × 3)= 4,800万円
→ 4,800万円までの遺産には相続税はかかりません。
■配偶者の税額軽減(配偶者控除)とは?
配偶者が相続する場合、特別に大きな控除(非課税枠)があります。これを「配偶者の税額軽減」といいます。
■非課税限度額
配偶者が相続する財産については以下のどちらか大きい方まで非課税になります。
- 1億6,000万円
- 配偶者の法定相続分までの金額
つまり、配偶者が多くの財産を相続しても、一定の範囲なら相続税がかからないという制度です。
■例
配偶者と子ども1人が相続人 → 配偶者の法定相続分は 1/2
遺産が3億円の場合 → 配偶者が1億5,000万円を相続 → 非課税(法定相続分以下)
■注意点
- 配偶者控除を受けるには相続税の申告が必要です(ゼロでも申告しないと控除は適用されません)。
- 配偶者控除があるとはいえ、将来的な二次相続(たとえば配偶者が亡くなった後の相続)を考慮することも大切です。
国税庁
「NO4158 配偶者の税額の軽減」 ご参照ください。
準確定申告
「準確定申告」について、ご説明します。
■準確定申告とは?
「準確定申告(じゅんかくていしんこく)」とは、亡くなった人(被相続人)が生きていた期間の所得について行う確定申告のことです。
通常の確定申告は本人が行いますが、亡くなった場合には、相続人が代わりに行う必要があります。これが「準確定申告」です。
■なぜ必要なの?
亡くなった方が、亡くなる年の1月1日から死亡日までに得た収入(給与所得・年金・事業所得など)があった場合、それに対する所得税や住民税を正しく申告・納税する必要があります。
■誰がやるの?
準確定申告は、相続人全員の連名で行います。
ただし、相続人のうちの1人が代表して提出することも可能です。
■提出期限は?
被相続人が亡くなった日から 4か月以内 に、税務署に提出しなければなりません。
例:4月15日に亡くなった場合 → 8月15日が提出期限
■提出先は?
被相続人の住所地を管轄する税務署です。
■必要な書類:
- 準確定申告書(確定申告書の様式を使用)
- 被相続人の源泉徴収票や医療費控除の明細など
- 相続人の署名または「付表(相続人の一覧)」の提出
■申告が必要なケース例:
- 亡くなった方が給与所得者で、年末調整されていない
- 年金収入が400万円を超えていた
- 医療費控除や雑損控除を受ける予定だった
- 不動産や株の譲渡益があった
■注意点
- 準確定申告によって還付金が出る場合もあります。過払いの税金は、相続人が受け取れます。
- 準確定申告とは別に、相続税の申告・納付(原則として死亡後10か月以内)も必要です。
相続登記申請義務化
2024年4月1日から施行された「相続登記の申請義務化」について、ご説明します。
■相続登記の申請義務化とは?
これまで、不動産の相続が発生しても「相続登記(名義変更)」をしなくても罰則がなかったため、長年放置されるケースが多く問題となっていました。
そこで、2024年4月1日から、相続による不動産の登記(名義変更)が義務化され、一定期間内に申請しないと**過料(罰金)**が科されることになりました。
■何が義務化されたの?
不動産を相続した人(相続人)は、取得を知った日から原則3年以内に、相続登記を申請しなければならない。
■いつから?
◆ 2024年(令和6年)4月1日 から適用されています。
■罰則は?
正当な理由なく申請しなかった場合は、10万円以下の過料が科される可能性があります。
■対象になる人は?
- 相続で土地や建物を取得した人(法定相続・遺言・遺産分割問わず)
- 複数の相続人がいる場合は、各相続人ごとに申請義務があります
■過去の相続にも適用されるの?
はい、過去の相続も対象になります。
たとえば、昔の相続で名義変更がされていなかった場合でも、義務化の施行日(2024年4月1日)から3年以内に申請しないと、過料の対象になる可能性があります。
■簡略的な手続きもあります
登記申請が難しい方のために、簡易的な「相続人申告登記」制度もあります。
これは、「自分が相続人である」と法務局に申告するだけで、申請義務を果たしたことになります(ただし名義変更ではないので注意)。
■まとめ:
義務化開始日 2024年4月1日
申請期限 相続を知ってから3年以内
罰 則 10万円以下の過料
対 象 相続で不動産を取得した全ての人
対象範囲 施行前の相続にも適用あり
◆相続登記は、司法書士に依頼することが多く、手続きが煩雑な場合は、当社にご相談下さい







